【サイドステップとは】
- 投げる方向に背を向け、振り向きざまの体のひねりを投擲力に変換するグライド投法。
- 円盤投げの要領で体を回転させ、砲丸に大きな力を加えることのできる回転投法。
どちらも一流選手たちに好まれる効率的な投法です。
しかし砲丸投げの歴史をみると、実はこの2種類の投法は、生まれたばかりの投げ方だといえます。
バリー・オブライエンがグライド投法を生み出したのが1950年代、回転投法が第一線で使われ始めたのが1990年代のことでした。
砲丸投げ自体は少なくとも1860年代から存在していたとされているため、グライド投法と回転投法は長い砲丸投げの歴史のなかではまだまだ新参者です。
サイドステップが主流だった
この2種類の投法が生まれる前、世界の主流だったのは「サイドステップ」という投法でした。
「サイドステップ」という名前の通り、投擲方向に対して体を横向きに移動させながら砲丸を投げる方法です。
動きとしては、反復横跳びに近いイメージでもあります。
現在では、大きな大会でサイドステップが使われることは、ほとんど無くなりましたが、学生大会などでは未だにサイドステップを使う選手がいます。
確かにサイドステップが、古い技術であることに間違いはないのですが、サイドステップにはサイドステップのメリットがあるからです。
詳しいメリットについては、以下の項目でご説明していきましょう。
【メリット1.初心者でもなじみやすい投法】
サイドステップの最大の魅力ともいえるのが
- 「初心者でもなじみやすい」
ということでしょう。
グライド投法や回転投法で、砲丸を投げられるようになるまでには時間がかかりますが、サイドステップなら初心者でも簡単にできます。
記録はともかくとして、サイドステップなら砲丸投げを始めたその日のうちに、投げられるようになるでしょう。
その違いは、それぞれの投法を見比べてみるとわかりやすいと思います。
グライド投法や回転投法も、動きそのものは複雑でないのですが、動きが速いので初心者の目には「どんな動きをしているか」がわかりにくいのです。
その点サイドステップは
- 非常にシンプルな動きですし、溜めの動作が大きいため動きを目で追いやすい
のです。
初心者にとって重要な「お手本の真似をする」というプロセスをこなしやすいのが、サイドステップの良いところであるといえます。
【メリット2.筋力の増強にも役立つ】
砲丸投げ未経験者は、そもそも砲丸を投げるための筋力が足りていないことがあります。
シンプルな競技ですが、砲丸を投げるためには「握力」「脚力」「投擲力」など全身の様々な筋肉を駆動させる必要があるのです。
特にグライド投法や回転投法では、投擲の際の遠心力に負けない筋力が必要不可欠です。
その点、サイドステップは
- 最小限の筋力でも砲丸投げを行うことができます。
- 砲丸を片手でキープする握力
- 砲丸を持ったまま移動する脚力
- 砲丸を前方に押し出す投擲力
の3つさえあれば、ひとまず「砲丸を投げる」という動作は可能です。
最初は大した記録もでないでしょうが、サイドステップで投擲を続けているうちに、少しづつ筋力もついていくことでしょう。
つまり、サイドステップを行うと
- 砲丸投げに必要な筋力を鍛えるトレーニング
にもなるのです。
グライド投法や回転投法で使う筋肉とは、少し鍛えられる部位が違いますが、それ以前に必要な基礎筋力が鍛えられることで、砲丸投げ選手としての器を成すことのほうが重要です。
他の投法で必要な筋力は、サイドステップを卒業して、投法の矯正を行う上で自然とついてくるでしょう。
【デメリット.記録を伸ばすのは難しい】
もちろん、サイドステップにもデメリットはあります。
サイドステップはあくまで初心者向けの技術なので、上級者にとっては大したメリットが得られないのです。
何より
- 「記録が出にくい」というのが大きなデメリット
になってしまうでしょう。
グライド投法や回転投法とは違い、サイドステップでは「回転の力」を砲丸に与えることができません。
つまり純粋な腕の力だけで投げている状態なので、遠心力を加えたグライド投法や回転投法のように
- 遠くへ飛ばすことが困難
となります。
「記録が伸びない」というシンプルながら、決定的な弱点のせいで、サイドステップは「古い投げ方」の烙印を押されてしまったのです。
しかし、学生大会までくらいなら、サイドステップで優勝する選手がいたりもします。
サイドステップは本人が持っている筋力の差がモロに出やすいので、未熟なグライド投法を使う選手よりも、身体能力の高い選手のサイドステップのほうがむしろ高い記録を出せたりします。
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