【室伏広治の「倒れ込み」を知っていますか?】
アテネオリンピック金メダル・世界陸上大邱大会金メダルなどなど…室伏広治選手の実績を挙げればキリがありません。
そんな室伏広治選手の代名詞ともいえるのが「倒れ込み」。
ハンマーを回転させながら体の軸を背面側に倒し、体をナナメに倒したままで回転するという高等テクニックです。
99kgとハンマー投げの世界では、軽量級だった室伏広治選手を世界の頂点に押し上げた一因は、間違いなくこの「倒れ込み」にあったといえます。
今回は、
- どうして「倒れ込み」がハンマー投げで好記録を生むのか?
- なぜ他の選手が真似しないのか?
という疑問に迫ってみたいと思います。
自分も室伏広治選手のようにカッコよく倒れ込みをマスターしたい!と思ったことがある方は、ぜひ参考にしてみてください。
【「倒れ込み」が生む効果】
そもそも室伏広治選手は、ハンマー投げの世界では小柄です。
トップ選手は100kgを超えるのが普通だといわれていますが、現役時代の室伏広治選手は90kg台しかありませんでした。
倒れ込みは、室伏広治選手が他の選手との体格のハンディを埋めるために修得した技術なのです。
物理的に、ハンマーは遠心力が大きいほど遠くへ飛んでいきます。
遠心力を大きくするためには、単純に回転半径を大きくすればよいのですが、普通のフォームでは回転半径にほとんど差が出ません。
その問題を解決するために、室伏広治選手は体を傾けながら回転する技術を磨きました。
真っ直ぐに立ったままで回転するより、ナナメに体を倒して回転したほうが回転半径が大きくなるため、その分大きな遠心力を生み出すことができます。
生み出した遠心力を全てハンマーに乗せ、より遠距離まで飛ばすことができる…これが「倒れ込み」というテクニックの正体です。
また、トップ選手の多くは3回転ターンですが、室伏広治選手は倒れ込みの効果をより大きく活かす「4回転ターン」を得意としました。
通常よりも大きな遠心力を生み出すテクニックにより、室伏広治選手は84m86という偉大な記録を残しています。
【どうして誰も真似しないのか】
倒れ込みの効果が凄まじいことは確かです。
しかし室伏広治選手に倣って、倒れ込みをマスターしようと試みる選手は不思議なほど少ないのが現状です。
効果的なテクニックだということは世界中に知られているはずなのに、どうして誰も倒れ込みを真似しようとしないのでしょうか。
その理由はいたってシンプルで、倒れ込みは「難しすぎる」のです。
言うのは簡単ですが「回転しながら後方に体を倒す」なんて技術、そう簡単に身につくものではありません。
通常、ハンマーの回転を大きくしたいなら外側に力を加えようとします。
ところが倒れ込みは回転の最中に内側に加速するイメージで行うため、ハンマー投げ選手にとって「本来とは逆の動き」が必要になるのです。
頭では分かっていても実行することは難しく、並の選手ならフォームがバラバラになって記録を落とす結果になるでしょう。
このテクニックの考案者である室伏重信さん(室伏広治選手の父親)いわく「世界で誰もやっていない技術」とのことで、事実この技術を修得できたのは室伏広治選手以外にほとんどいません。
当の室伏広治選手でも、倒れ込みをモノにするまでに数年はかかってしまったというくらいですから、そもそも倒れ込みを教えることのできる指導者もいないわけですね。
記録を伸ばすために倒れ込みをマスターしたい!と考える選手は少なくないでしょう。
しかし安易に真似したからといって出来ることではありませんので、本当に倒れ込みをマスターしたいなら、数年間は本気で練習に取り組む覚悟をしたほうがよいでしょう。
室伏広治選手のトレーニング動画
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