中級者にありがちな「ハードルを倒す」というミス
ハードルの恐怖心をなくす練習方法はこちら
恐怖感なく走れるようになってきた段階が、ハードル走における「中級者」の証だと考える方も少なくありません。
しかし中級者になると、「ハードルを倒す」というミスをしてしまう方が増えてきます。
最小限の動きで記録を伸ばそうとするあまり、跳躍が足りずにハードルに足をひっかけてしまうからです。
初心者はとにかく「ハードルにぶつからないように跳ぶ」ということを目標にしますから、意外と初心者の方がハードルを倒す頻度は少ないくらいです。
現在のハードル走のルール上、ハードルを倒すということ自体が、反則になるわけではありません。
ただし、やはりハードルに足がひっかかると減速してしまいますし、リズムよい走りができなくなるので、記録が伸び悩むのが一般的です。
稀にハードルを倒しても、減速せずに走れる技術の持ち主もいますが、ハッキリ言ってこれはかなり才能のある、ひと握りの選手しかできないので現実的ではありません。
最近ハードルを倒す頻度が増えてしまったという中級者は、「ハードルを倒さずに走り抜ける」という次のステップに進むべきです。
倒れるハードルを少なくすることができれば、きっとタイムもその分縮まってくれるはずですよ。
「抜き足」の練習を徹底的に行おう
ハードルを超えるとき、まっすぐに伸ばす足のほうを「振り上げ足」といいます。
そしてもう一方の曲げるほうの足を「抜き足」といいます。
ハードルを倒す中級者の走りを見ていると、抜き足が上手くいっていない選手が多いことがわかります。
振り上げ足は、しっかりとハードルを越えているものの、抜き足がハードルをひっかけて倒してしまっているわけです。
つまり、
- 中級者がハードルを倒さずに走り抜けるためには、抜き足を徹底的に練習する
ことが大切なのです。
ハードルを跳ぶ瞬間、
- 抜き足は振り上げ足に対して90度、かつハードルに対して平行の角度
にします。
抜き足の角度が少しでもズレると、ヒザがハードルに当たってしまったり、つま先がハードルにひっかかってしまいます。
こればかりは一朝一夕で身につくものではありませんので、正しい抜き足の角度をマスターできるまで、何度もハードルを跳び越えるしかありません。
練習を行う際は、
- ゴール側から録画した自分の跳躍を見直してみる
のも効果的です。
自分ではしっかり抜き足を90度に曲げているつもりでも、動画で確認してみると、全然曲がりきっていない場合があります。
跳んでは動画を確認、跳んでは動画を確認と何度も繰り返し、理想のフォームで跳べるようになるまで練習を続けましょう。
抜き足をマスターするには「柔軟性」も必要不可欠
綺麗な抜き足を行なうためには、足を振り上げ足に対して90度に曲げる必要があります。
…と口で言うのは簡単ですが、これが実際にはなかなか難しい技術です。
跳んだ瞬間に抜き足を90度に曲げるためには、まず
- 「柔軟性」が必要不可欠
です。
普段からしっかりと柔軟を行っていなければ、跳ぶ瞬間どころか、ストレッチの段階でも抜き足を綺麗に曲げることはできません。
股関節の柔軟性を上げるために、練習前だけでなく、自宅でもコンスタントに柔軟を行うよう心がけましょう。
柔軟の効果は、体が暖まっているときに現れやすいと言われているため、
- 入浴後などに柔軟体操を行う習慣
をつけるのがオススメです。
股関節やヒザの柔軟性を上げることのできる方法なら、手段は問いませんが、簡単なヨガを取り入れるのもよいでしょう。
ヨガは関節に負担をかけることなく柔軟性を上げてくれますし、意外にもハードル走に必要な筋力を鍛えることにも役立ちます。
ハードルを倒すことを前提とした走り方
ここまで、抜き足を学び直すことによる「ハードルを倒さない走り方」のポイントをご紹介してきました。
しかし世界には「ハードルを倒すことを前提とした走り方」もあるということを、最後にちょっとご紹介しておきます。
手放しに推奨することはできませんが、ハードルを倒すこと自体が悪なのではない、という見本として頭の片隅に入れておいてください。
ハードルを倒しながら走る選手として、世界で最も有名なのは、おそらくアメリカの「アレン・ジョンソン」ではないでしょうか。
彼は1996年の、アトランタオリンピックで金メダルを獲得した偉大な選手でありながら、「ハードルなぎ倒し男」という愛称で呼ばれる異色の選手です。
アレン・ジョンソンは、間違ってハードルを倒しているのではなく、腿の部分でわざとハードルを倒していました。
ルール上、故意にハードルを倒すことは禁止とされていますが、アレン・ジョンソンのように、見た目からは故意に倒しているのかどうか確認しづらい場合は黙認されています。
彼は自分のハードルの倒し方について「常に最良の倒し方をしている」と語るなど、ハードルを倒すことを「技術」として扱っていました。
実際、アレン・ジョンソンは、最小限の労力でハードルを倒すという技術を駆使して、引退までに数々の世界大会で、合計12回も1位を獲得しました。
彼の卓越した才能と技術あって成り立つ方法とはいえ、アレン・ジョンソンの走り方を見ていると、記録を出すためには「ハードルは絶対に倒してはいけない!」というわけではないのだと教えてくれます。
どう練習してもハードルを倒してしまうという選手は、それでも大記録を打ち立て続けた、アレン・ジョンソンの走りを参考にしてみるとよいかもしれませんね。
このような一流のハードルの選手の練習方法を学ぶことは大切です。
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